Mephistopheles ROB 「Hide and seek」 Interview


Mephistophelesという名前はジャパメタファンならば一度は耳にしたことがあるのではないだろうか?80年代に人気を博したものの音源はデモテープ1本のみ残し解散、後に復活後はメンバーチェンジをしながらも「Metal On Metal」「devils on metal revitalized」とアルバムをリリースし、ライブ活動も盛んだ。今回リリースされた「Hide and seek」は勿論、現在のバンドについてヴォーカルの梅原”ROB”一浩に語ってもらった。

3年振りの新譜がリリースされますが、今の率直な気持ちを聞かせてください。

ROB:レコーディング自体は大分前から始まっていたんですけど、曲を完成させることに時間がかかった訳じゃなく、スケジュールを上手く組むことが出来なくてこれだけ時間が空いたという感じですね。でも「やっと終わった」という気持ちでもないんです。レコーディングと曲作りが同時進行だったので「これはどうなるんだろう?」と先が見えなかったですね。終わらないとかじゃなくて、レコーディングして曲のチェック、そして次の行程へと進めていくわけですけど、録ったは良いもののそれを確認するまでに時間がかかったり、そこの流れが上手く運ばなかったんですよ。
変な話ミックスダウンするまで作品の完成形がイメージ出来なくて、エンジニアやプロデューサーの岡垣君(岡垣”Jill”正志 ex-Terra Rosa、Jill’s Project、Aphrodite) しかそれが見えていなかったと思います。マスタリングの時に「ああ、出来た。こういう作品か。」と分かりました。

断続的に作業をしていたこともあって完成形が見えてこなかった、ということですか?

ROB:曲のベーシックなものを録って、それの色付けみたいなものを岡垣君にお願いすることが多かったんですよ。岡垣君も忙しい人なので東京に来れることが少なくて、データ上のやり取りはしていたんですが会う機会が少なく、意見を交わす時間があまり無くて。岡垣君とは一度バンド(魚雷)を一緒にやっていた時があったので、想像以上に僕のことを分かってくれているというか「Mephistophelesはどういうことをしたいのか、どうした方が良いか」ということも分かってくれていたんです。僕本人の方が「どうしたら良いんだろう?」と見えていなかったんですね。変な話になるけど「岡垣君に任せれば良いものが作れる」という信頼があったので、と言うか実際に任せて大丈夫な人なので(笑)「流石岡垣君だな」と変な感じだった(笑)

岡垣さんとの面識は80年代の頃からですか?

ROB:勿論、Terra Rosaの時からです。

今回のレコーディングに関してTwitterに少しずつ情報が上げられていましたが、プロデューサーに岡垣さんが就いたというのが意外だったんです。この二つが一緒になるとどうなるんだ?って……

ROB:想像が付き辛い?

Mephistophelesというバンドのヘヴィメタルやスラッシュメタル的な音楽性に対して岡垣さんの音楽性は70年代ハードロック、様式美、バンドで言ったらDeep PurpleRainbowといったイメージがあるので、この組み合わせによる結果というものが想像し辛かったです。

ROB:それはわかります。もう随分前の話ですけど、プレイヤーとしての岡垣君はハードロックの人だし、言ってしまえばオルガンの人でDeep Purple、Rainbowの人ですよね。でもサウンドを作る人としては何でも出来ちゃう人。僕もそれは知って分かっていたんです。結局前作、2015年にリリースしたアルバムが自分達自身も完成系のイメージが分からないまま作ってしまったところがあったので、今回は「音像を明確に、立体的にしたい」という思いが強かった。レコーディングを始めるときにプロデューサーやエンジニアは誰にお願いしようか考えて「岡垣君だったらイメージを形にしてくれる」と思ったんですね。この時はまだ「こういう音で!」とか具体的なものは無かったんですけど、こちらの求める音がどんな音でもそれを作ってもらえる、言い方を変えれば乱暴だけど「録った音が何であろうともどうにでも出来る」のでお願いしました。

岡垣さんがアルバムをプロデュースということで曲中で効果音的にシンセの音が加えられていて、これまでのMephistophelesとは印象が違いますね。

ROB:全然違いますよ。前作では全くしていなかったですね。シンセが入っているから良いとか悪いとかは無いですけど音の厚み、奥行きを出すということで必要だろうとなったんです。岡垣君の方からこういったアイデアを沢山出してくれて、合う合わないや使いたいものを選んで……かなり使いましたけどね(笑)凄く良くしてもらったと思います。

ジャンルに関係なく最近の音楽の傾向として、音を重ねて厚みを持たせることがトレンドだなと感じているんです。それこそギターが目立っている後ろでシンセやストリングスが入って鳴っているような。今回の新譜でMephistophelesが現役のバンド足らしめているのはこれが大きいんじゃないかと思いました。

ROB:正にその通りだと思います。バンドとしては80年代からのバンドですけど当時からのメンバーは僕しかいないですからね。無茶苦茶若いメンバーがいるわけではないですが、今も現役として活動して現在進行形で音楽を作っているメンバーがバンドにいるので自然と80年代の音にはならないです。僕も87、88年に一度音楽の世界から退いているので、もう一度活動を始めるまでの十何年間が良くも悪くも無いんですよ。ぽっかり空いて。だから曲を作る、作詞をするに当たって80年代後半から作りたいものはずっと続いていて、退く直前のその次にやりたかったものが繋がっているだけなんですよね。音楽の世界を退いてからヘヴィメタルという音楽の影響がないんです。復活当初は80年代のメンバーで活動していたんですけど、各メンバーのプライベートでの事情であったり、新しいものを創っていくことは単純にプレッシャーもあるのでそれを抜きにして音楽を楽しみたいというメンバーもいたんですね。僕はバンドで新しいものを創りたかった。どちらが良いとか悪いとかじゃなく、その結果が今のメンバーになりました。曲についても80年代の古き良きものを再現しようとはこれっぽっちも思っていなくて、それにメンバーが違うので再現出来ないですよ。もしそれを作るとしたら上手い下手の問題ではなくて、それを作っていた当時のメンバーの方が良いです。昔からの曲をやっていますけどメンバーが違うので聴こえ方も変わっていると思います。

やはり各メンバー自分のカラーがあるから大小差があれど違いがありますよね。特にMetal On Metalにも収録されている曲を聴き比べると面白いです。

ROB:曲作りに関しても「新しいことをしよう!」と言って曲を作ったことは無いですし、「ブレイクしてやろう!」と狙っていたことも無いですからね。「こんな曲出来たんだけど、面白いからやってみないか?」という感じです。
今回のレコーディングで面白かったのはLurking in the darknessという曲があるんですけど、実はボツ曲だったんですよ。ベーシックなものを録ったものの中々完成形が見えなくて岡垣君に力を貸してもらってやっと出来上がった曲なので印象に残っています。この曲は岡垣君のおかげでこうして形になったんですけど彼に相談した時には当然「えーっ!?」って言っていました(笑)

他にも複数のミュージシャンがレコーディングに参加されていますが、例えばlynch.葉月さんなどlynch.自体が激しい音楽をやることもあってMephistophelesにもマッチしそうだしそれが理由なのかな?とか想像していたんですがどういった経緯で参加されたんですか?

ROB:彼はDictator shipのコーラスで参加してもらっています。サビの部分も葉月ですからね。lynch.は前々作のSINNERS-EPという作品でOUTRAGE安井(義博)君が参加していたりでメタルの繋がりもあったりもするし、最近のバンドの中でもlynch.は大好きで、葉月のヴォーカルも大好きなので仲良くさせてもらってるんです。「Dictator shipに葉月のヴォーカルが入ったら格好良くなるのになー」と思いながらレコーディングのミーティングをしていた2、3日後にZeppTokyoでlynch.のライブがあったんです。僕も見に行ってて終演後に葉月に「一曲歌って欲しい」と伝えたら快諾してもらえたので実現しました。まだレコーディングも始まっていなかったんですけどね(笑)今回は僕を始めメンバー全員やりたい放題やっていて、やりたいこと全部実現させちゃったんじゃないかな?コンパクトにまとめられている作品ですけど、現時点で僕らのやりたいことは全て詰まっていると思います。以前からある曲は「こうなったら良いのにな」ということを形に出来たし、新曲に関してもボツ曲を生まれ変わらせることが出来たり(笑)アルバムのリード曲のHide and seekにしてもレコーディング中なのに詞も出来ていませんでした。寧ろリード曲が決まってない、何曲入りにするかも決まっていない、そんな状況で「新曲(Hide and seek)は今回無理かな?」とも思っていたんですけど奇跡的に間に合ってしまい、「これって思いの外リード曲にぴったりじゃない?」と思って。一番最後に出来た曲なのにリード曲になって、しかもアルバムタイトルにもなる曲になるという不思議な曲ですよね(笑)

アルバムの一曲目は佐藤潤一(Dr)さんによるインスト「序列67番Amduscias」ですが、他の収録曲が決まって最後に追加されたのですか?と言うのも続くHide and seekへの流れが秀逸だったので。

ROB:この曲が一番最初に出来た曲なんです。何ヵ月前だろう?出来上がるまで時間がかかりましたけど当時は録音する予定も無かったのもあって「潤ちゃん(佐藤潤一)そろそろ曲を提供してもらえない?」と軽いノリで話したんですね。それで出来上がったとメールが来たときに「SEで使ってもらえませんか?」と言われて、最初は何だろう?と思いました。メロディーを付けられないか聞いたんですけど彼の中で付けられないと言っていて、「声を入れることは可能ですけど、メロディーを付けて歌!という感じじゃないんです」とも言われたんですね。この時点でまだ曲を聴かせてもらってなくて、何も聴いていないけど直して欲しいところがあったら直してもらって良い?と聞いたら「多分直せないと思う」と返ってきて、何だかよく分からないなと。それで曲を聴いてみたら想像していなかった曲で確かに直す直せないの話じゃなかったです。よくこんな曲作ってきたなと思いました。

沢山の音やクワイヤなども入っていて確かに凄く凝った作りですよね。

ROB:潤ちゃんは映画音楽が好きなんですよ。だからそう考えるとこういう曲作るのも成る程と思える部分が沢山あります。最近のライブのSEはこの曲で、アルバムを作ることになったときにアルバムの頭に入れようと考えました。

この曲を聴いて思い浮かぶものが、自分の中にあるMephistophelesというバンドのイメージ、その雰囲気とかなり一致していたので凄く良い曲だなと感じました。

ROB:それ言ったら潤ちゃん喜ぶと思います。潤ちゃんなりに僕らのステージは、「悪魔が降臨する」イメージで作ったようなので。

本人を目の前にして言うのは勇気がいるんですけど、Mephistophelesというバンドに怖いイメージとかある種の不気味さを感じていて……

ROB:(笑)

ステージ衣装も軍服だったりバンドの世界観を丁寧に作っているじゃないですか?これが怖いだけじゃなくてハードな、ピリッとしたシリアスな世界観を付け足していて、やはりある種の不気味さがあると思うんです。

ROB:まあパーティーバンドじゃないからね(笑)

先程佐藤さんは映画音楽が好きと話されてましたけど、そこで私の中で合点がいったところがあって。この曲を聴いていると今私が話したようなバンドのイメージが頭に浮かんでくるんですよね。音楽を聴いていて映像や光景がイメージ出来るって凄いな!そうさせるこの曲は凄く良い曲だな!と悦に入っていると直ぐ様Hide and seekに突入するという

ROB:フフ(笑)

ライブでもこの流れじゃないとお客さんも納得しないだろうと思いました(笑)今回の曲の中では一番キャッチーでジャパメタファンには堪らない曲だなと思うんです。サビの「Hide and seek」はライブで客席も歌う光景が浮かんでくるMephistophelesというバンドらしいヘヴィ曲ですよね。

ROB:そうそう!もう弄れないですここは(笑)この流れは鉄板なんです。この曲が今回の中で一番キャッチーですね。そしてジャパメタファンのどストライクでしょう(笑)変化が無いと言ったら語弊があるけど普通に良い曲が出来たなと思っています。さっきも話したけどレコーディングに入った当初は曲も出来ていなければ歌詞も無かったのに歌詞が出来て、何となくコーラスパートも「こんな感じかな?」と出来上がった時に「あれ?」と思って。「この曲が今のバンドを現しているんじゃないかな」と、それが一番分かりやすいというか、やっぱり不思議な曲ですよね。

感覚として「あれ?出来ちゃった」みたいな?

ROB:そうそうそう!難しいことはやっていない、と言うのは言い過ぎだけど特別凝ったことはしていないんですよね。各パートにはあると思うんですけど。何かを狙わないで出来ちゃったんでやっぱり不思議ですよね。

ファンが求めるMephistophelesの曲そのものだと思います。
ROB:数年前までは化粧を取ったら、もしかするとスラッシュメタルっぽいアプローチに近いと、僕自身も周りの人達も思っていたところがあったんですけど、今回のレコーディングを通じて「僕らはジャパメタだな」と感じるようになりました。

最近SNSでそう呟かれることが多いですよね。

ROB:昔の僕らの音楽はジャーマンメタルとかAcceptとかで、周りのジャパメタバンドと比べて異質だったのに今回出来上がったものを聴いてみたら凄くジャパメタだったという(笑)

私なりにROBさんのジャパメタ発言を見てどこのことを言っているんだろう?と考えてみたんですけど、歌のメロディーを日本人が作っていることと、ジャパメタと呼ばれる人達と同じ世代なだけに背景にあるものの共通点が多いからじゃないかと思うんです。

ROB:そうですね、歌えちゃうんですよね。詞が日本語というのもあるんですけど。実は僕ここ数年で歌い方を変えたんですよ。Metal On Metalを聴いている人は特に感じていると思うんですが、歌のキーが下がったというかスクリーミングシャウトをしなくなったんです。寧ろ地声で歌うように意識的に変えてきました。前作のレコーディングの時は歌い方を変えるつもりが無かったんですけど、録った歌を聴いたら全然良くないんですよ。「あれ?なんか前と同じように出来ないのかな?」と何度やっても出来なかったんです。やはりヴォーカルってどうしても身体なので、残念ながらもう無理が来たのかなって思いました。年を重ねても昔と同じことが出来る人はいるでしょうけど、僕は出来なかった。だから前作では悔しいけどレコーディング中に歌い方を変えたんです。模索しながらだったので納得していないところがあるし、良い歌と思わないままリリースしてしまったので後悔があります。あれからメンバーでこれから曲を作っていくに当たり話し合って「前作でのキーは今の自分のキーじゃないからパフォーマンス出来ない」と伝えました。今までにもアレンジ変えたりしていて、変えられないところは無理矢理押し切ったりしていたけど今一番ベストの状態を出すには歌を変えなきゃいけない。まだ満足しているとは言えないけどね。こうして歌を変えたことがジャパメタになった一つの要因でもあると思っています。前のスクリーミングだけだとある意味ジャパメタっぽくないですよね?

以前のスクリーミングな歌い方をしていたときは、聴き手側としてUdo Dirkschneider(U.D.O、ex-Accept)が好きだってことが伝わってきて、そういったルーツが見えることがまた魅力だったんです。それで歌い方を変えた前作や今作では同世代のジャパメタバンドのヴォーカリストの色が見えてきたんです。ご自身も似ていると認識されているようにNOVさん(Volcano、地獄カルテット、ex-AION)を始め、個人的にはスクリーミングした歌い方はMasakiさん(ex-FLATBACKER、E.Z.O、LOUDNESS)、Human systemやDictator shipで聴かれるねちっこい歌い方はDead Lineの頃のMorrieさんと同じ系統だなと感じました。勿論同世代であるが故に影響を受けた音楽が似ているからだと考えていますが、同世代のヴォーカリストから影響を受けたりしていますか?

ROB:その点に関してはあまり無いと思います。

Metal On Metalに入っているDictator shipの歌は今作のDictator shipの歌と違いますから。その違いは自分の一番良いテンションというか、声が一番伝わりやすいというか、今作のテーマを挙げるとするならば自分の歌の強さが出ているかということなんです。今回は岡垣君にヴォーカルディレクションもお願いしていて、アルバムを通して「とにかく歌が強く聴こえるようにしたい」と彼に言いました。以前の僕の歌の印象は「高い」だったと思うんです。今は「強い」ということに拘りたい。歌入れしているときもどれが「強い」かセレクトしていきました。僕の出ている声で一番強いところを聴いてる人に伝えたいんです。実は上手い下手とか好き嫌いという話ではなくてそういう意味でlynch.の葉月の歌が好きなんです。説得力が凄くあるんだと思います。歌もMCも。同じヴォーカリストとして、全然歳は下なんですけど「ああ、声でこんなに伝えることが出来るんだ。何故こんなに強いんだろう?」と共感するし憧れに近いものがあります。だから今回は僕なりの強さを出していきたいと思っていました。自分から発せられるエネルギーがどれが一番強いんだろう?それがバンドに反映されていたら良いなとそういうことを考えてました。
「強い」と言っても圧倒したいとかじゃなくて、例えばHide and seekのサビを一緒に歌いたいといった人を惹き付ける「強い」など色んな意味があると思うんです。それこそ追い付けない強さもありますし、凄い高音域で歌って「機械的なレベルの強い」というのもありますよね。

音楽を聴いていれば良くあることですけど、理由を説明できないけど凄い、という感覚がROBさんの言う強いでしょうか?例えばJudas Priestのような歴史のあるバンドの音源は近年に成る程音圧が高くて、迫力のあるサウンドだと思うんですが、過去の名盤に収録されている曲のインパクトは何にも代えがたく、サウンドの良し悪しに左右されない。そういうことなんでしょうか?

ROB:そうですね。80年代からMetal On Metalまでの僕はAcceptだし、ハイトーンに凄く拘っていました。それが前作の時に扱い切れなくなっていることに気が付いて「僕の武器が無くなった」と凄く焦りを感じました。ハイトーンは自分の持ち味だと思っていたし、武器だと思っていたので。それで自分の特別なことって何なのかわからないんですけど、きっと今まではハイトーンが特別なものだったんでしょうね。僕を知っている人にもそういう印象を与えていたと思うんですけどそれを使わない、使えないとなった時に等身大の自分が一番強いだろうと思ったんです。特殊なことは必要ない、今持っている自分の中で一番の強み、発せられる声が武器になると考えました。

自分の「強い」を探し始めて、現在ではそれが形になってきた段階というところでしょうか?

ROB:素直にそれを求めてやって来たからでしょうね。そんな気がします。パッと聴いたときに感じる変化は歌じゃないかなと思います。昔の僕を知ってる人は特にそう思うんじゃないかな?

続いて発売されたPlay with the evilはこれまでの曲に比べてヘヴィであるという印象です。疾走感のあるテンポじゃないですし、ハイトーンでもないし、これまでのバンドのスピードメタルやスラッシュメタルといったイメージとは違う曲です。この曲ってギターのリフが凄く印象的で、80年代にありそうだけどそうでもない、かと言ってモダンな音であるかというとそうとも言えない。どちらともつかない、掴み所がない不思議な感覚を与えられます。

ROB:この曲は曲構成にしても一番今の新しいメタルな曲だと思います。でも今現在ということを意識して作った訳じゃないんです。禎君が作った時に「今のメンバーならやっても良い」と思えたんですよね。今ライブでも演奏していますし、hibiki(Ba)が入ったことで曲のイメージが出来て、それで禎君も書いたと思うんですけど。何だろうな………恐らく禎君本人は深く考えていないと思うんですがこのラインナップでやったら面白いだろうなということは分かっていたと思います。Hide and seekが出来るまではライブのセットリストの一曲目がこの曲だったんです。新曲だから最初に持ってきているというだけでリード曲でもないし、でも今っぽいからレコーディングしたら収録しようと考えていました。Hide and seekが出来ていなかったレコーディング当初はSE無しでこの曲を一番に持ってこようと思っていましたけど、良くも悪くも分かりやすいHide and seekが出来てしまったがために後ろに下がったというだけなんですね(笑)それでこの曲を演奏するのって難しいんです。そういう複雑なものを狙って作っていないんですけど全パート難しいです。

聴いている側も取っ付きやすかったHide and seekの後のこの曲はどうノったら良いか探ってしまう感覚があります。リズムが一筋縄ではいかない複雑さがあるというか、消化しきれないというか………

ROB:わかります。ライブでやっていてもそういう客席の反応も感じますから(苦笑)この曲を表現するのって難しいんですよ。モノにするにはライブでもっとやっていかないと馴染まないでしょうね。

あれは難しいですね(笑)

ROB:ライブでもやりますけどもしかするとライブ向きの曲じゃないかもしれないですね。ライブでやってはいるものの「ライブでこう生きる」といったタイプの曲ではないかもしれない。この曲で一番早いところってギターソロのところじゃないですか?そこで暴れるっていうのも変な感じだし……

私の印象ではもう一度聴いてみよう、とクセになる不思議な魅力を感じる曲なんです。リズムは難しいし、キャッチーなメロディーで溢れてるタイプの曲ではないですが気になってもう一度聴きたくなるんです。目の前にご馳走があるけどどうやって食べたら良いのか分からないという感覚です(笑)
Lurking in the darknessもPlay with the evilとはまた違った魅力のある曲ですよね。

ROB:曲を聴かされたときにメンバーの誰もピンと来なかったんです。作曲者は禎君なんですけど、テンポが速い曲ばかりだからこの曲を作ってきたんでしょうね。新曲をどうしたいかを今のメンバーは「この曲はこんな感じだろう」と、完成形を読みながらやるところがあるんです。でもこの曲は全く読めなかった(笑)「これは何をやりたいのか伝わらないね」とまでなったんだけど、そうなってしまうとインスピレーションの有る無しだけで採用か不採用になってしまうじゃないですか?悩んだけどとりあえず詞を書いて、「録るだけ録ろう」ということでレコーディングし始めて、ボツ曲だと思っているのにね(笑)それでベーシックなものを録ったときに「これは僕らの頭の中でボツ曲というのが拭えないから、バンド外の人間である岡垣君に好きなようにやってもらおう」とお願いしたんです。お願いするときに鍵盤やオルガンは封印してもらって「シンセとかを一杯使った音像で好き放題アレンジして!」と提案しました。それに対しての岡垣君の回答(出来上がったもの)が「全然変わったな」と面白かったので、禎君に「君の曲なんだけど好きなようにやらせてくれ」と話して、コーラスをどうしようか考えたときに韓国のMESSGRAMというバンドの、滅茶苦茶良くて格好良いから大ファンなんですけど、ツインヴォーカルの女の子がクリーンで、男の子がグロウルというかスクリーミング的に歌うんですが二人とも上手くて「この二人の声が欲しいな!」とレコーディング中に韓国へ連絡して、曲のイメージを伝えて音から歌詞からネットで送って「歌ってくれませんか?」と依頼しました。やっぱり大ファンなのでどうなるか大体想像出来て、でもどういうものが出来上がるか楽しみでしたね!送られてきたものを聴いたら問題無し、全然OKでした!
そんな経緯もあって最初からライブでも演奏しよう!という曲じゃなかったんですね。こんな出発点だったんです。録音するけどとことん作り込み過ぎってくらい作り込んでライブじゃ出来ませんって、っていうアレンジにして。結果壮大にして声も一杯入れて……じゃもうライブで出来ないよね?ってなりました(笑)実際この曲はシンセが入りますし今回もツアーでやろうか迷っているんです。音が壮大過ぎちゃって5人では無理ですよ。同期させたりとか方法はあるんですけどね。

今までは録音するからにはライブでも必ずやるってことが前提だったけど、ライブを前提に考えなかったのは今回のこの曲が初めてのことだと思います。現在ではあるあるな話ですが、データのやり取りをしてレコーディングを進めたりするので、現場にメンバーが集まって作業することがないんですね。今思えば可笑しいんですけど作曲した禎君が一番分からない状態で、こっちもそれを面白がってやりたい放題、ライブでやれないならやるだけやっちゃえって(笑)コーラスも入って初めて禎君も聴いて「こうなるのか」と。
この曲もまたHide and seekとは別の意味で完成したものを聴いて「こんなものが出来た」と笑っちゃいました(笑)ウチに今まで無かったタイプの曲だったので、最初は笑っちゃうんだけど「これをバンドでリリースして良いのか?」と考えたりしました。でもこの曲が完成した時にも「ウチはジャパメタだな」って思ったんですよね。

確かにジャパメタという言葉が合います。

ROB:今まではアルバムを作るときにこうしたい!というテーマがあったんですけど、今回のアルバムはモヤモヤしたところから始まっていて途中からテーマが見えてきた、それまでメンバーの誰も気付かないという(笑)所謂御約束が無かったんです。本当に面白かったですよ今回は!途中ギターの音に関しても「この音違う!」と曲のイメージに合うように思いっきり変えちゃったりもしたし、予想外のものが出来上がったという感覚ですね。アルバム通してもテーマが決まらないまま作っていったらこんな作品が出来た→今までそんな風に思ったこと無かったけど自分達ってジャパメタをやっているじゃん→出来に凄く納得している。そんな感じです。それでも80年代じゃない音楽になっているのが良いです。その頃のメンバーもいないし僕も歌い方を変えてしまっているので、そうなる要素は無いんですけどね。これが今の僕達だなと思っています。

今回はMephistopheles解散後に組んでいたERASER HEADの曲が三曲収録されていて、以前発売された「Metal On Metal」にも収録されていたKiller in the homeHuman systemDictator shipをリレコーディングされています。以前と比べて大きなアレンジは無いものの、音がカッチリとしてタイトになり、ドラムの音がとてもテンションを上げさせられる音になったと感じたのですがこれもまた岡垣さんのプロデュースによるものでしょうか?

ROB:そうですね、以前と大分変わりましたね。この三曲は古いタイプの曲なんですけど、僕の中ではやり方を変えれば古く聴こえないだろうという確信がありました。ここ最近のライブでも演奏していて、最近僕らを知ったお客さんには「Metal On Metal」が廃盤になっていることもあって、今入手出来るCDに入っていない知らない曲なんですよね。そういう事情があったので今の形で録ってみようと思いました。僕自身この三曲が好きということもあるんですけどね。

元々はERASER HEADの曲ですがMephistophelesのアルバムに収録したということは、ROBさんの中で別バンドの曲だからと分けて考えていなかったということですか?

ROB:特に区別していませんでした。作曲の名義をERASER HEADとしているだけで、ERASER HEADの曲の権利は僕が持っているんです。以前からMephistophelesの曲としてやれば良いと思っていたんですね。hideちゃん(X JAPAN)の追悼ライブ(2018年5月3日に行われた-BREAK OUT THE ROCK 2018-)の時にわざと一曲目にDictator shipを持ってきたり(笑)ERASER HEADの活動期間は短かったのですがライブはいつもこの曲で始まっていました。だからって訳じゃないです。当時のこんなことを知っている人は少ないですから。確かこの時にはレコーディングすることが決まっていたのかな?

因みにERASER HEADの作曲過程はどういうものだったんですか?

ROB:僕とギターのRANDY(高橋和仁)二人で作っていました。解散後にRANDYがミュージシャンを辞めるので作曲者として名前を載せるのは変だという話から落としどころとしてバンド名義となっています。彼の中で引退した人間が表に出るものではないという考えがあったみたいですね。

今回は新曲四曲(一曲目のインスト含む)と過去の曲が三曲という内容ですが、曲としては用意していたものの収録を見送った曲などはありますか?

ROB:いや、無いですね。元々は一曲、二曲のシングルをリリースしようと考えていたんです。それこそPlay with the evilと何か一曲位でしか考えていなくて、どこからリリースするとか具体的なことは何も決まってないまま始まりました。何かリリースしないとライブをやるネタがない、位の単純な理由しかなくて。やっていくうちに収録したい曲が増えていった結果フルアルバムじゃないけどミニアルバム位にはなるな、と変わってきたんですね。この段階でもまだHide and seekはリズムパターンしか完成していなかったんですけどとりあえずドラムだけは録っておこうと、そんな風に進めていくうちに少しずつ出来上がっていったんですよね。

それで曲が増えていったのは良いけどこの時まだリリース先が決まっていなくて(苦笑)実は前作をリリースしたレーベルの社長が亡くなられたのもあって、そこからのリリースが出来なかったんです。こういう時に動くのは僕の役目なんですけど、この時は探すのが難しいなと感じていました。それで色んなところに今の状況を説明しつつ相談をしていたら、岡垣君がTerra Rosaでアルバムをリリースしていたり、hibikiが以前参加していたMardelasLight Bringerがキングレコードに所属していたので色んな人に「キングレコードに話をしてみたら?」と言われましたね。「そんな簡単に言うけど…」と思いましたがこの時には既にlynch.の葉月には参加の依頼をして承諾を貰っていたんです。それでlynch.もキングレコードじゃないですか?加えて名古屋と大阪で一緒にライブをしようと声をかけたKelly Simonzもキングレコード。良く考えたら全部キングレコードと繋がっていくんですよね。

それで岡垣君にディレクターを紹介してもらえないかお願いして、リリースしてもらえるかわからないけど会ってもらえるならという気持ちでした。それで直ぐに会って話をすることになって何回かやり取りをしていたら、丁度キングのディレクターさんも僕の周りにいる人達と仕事をすることが多かったみたいで、僕の名前をやたら聞かされていたらしいんですよ(笑)お互い会ったこともないのに情報だけは行き渡っていて。会った時には「何だこれ」って二人して笑っちゃいましたよ(笑)縁と言ったら縁なんだろうけどその後はスムーズに事が進んでキングと契約しました。
僕は今回レコーディングにしてもキングレコードさんのスタッフ、参加してくれたゲストの皆さん等全てにおいて良いチームだったなと嬉しく思っています。アルバムは偶発的に色んな意味で面白いものが出来上がったし、環境は凄く整っているし、好きな人皆と仕事が出来たと思えるんですよね。制作が進めば進むほどチームに愛着が湧いてきて、最初何も見えなかったものが見えてくるようになるにつれて「俺は今回好きな人としかやっていない、これって凄いな!」と思いました。

仕事でも何でも、何かをやるときにストレスを感じないでいることってそうそう無いですよね?

ROB:本当にそうなんです!

完成して遂にリリースされましたけど今の気持ちを聞かせてください。

ROB:今回は本当に色んな人に助けられたなと感じていて、見えないエネルギーが強かった気がする。完成までの人の愛情というか、エネルギーが強かったなと思います。

自分でコントロール出来ることって凄く少ないと思うんです。僕はよく周りの人に何でも出来るとか器用そうと言われるんですけど実は真逆で何も出来ないです。出来ないことがコンプレックスだから、それが出来るように僕は見せるんでしょうね(苦笑)物事が上手くいっている時って自分がコントロールしていない時の方が多くて、今回は良い意味で任せてたし委ねてたし、今はそれが良い結果になっている気がしています。

これまでの話を聴いていて今作はストレスを感じるよりも、自分の想像を越えた作品が出来上がることに喜びと達成感を感じていらしたんだなと思いました。勿論生みの苦しみがあったでしょうけど、出来上がったものを前にしたらそんなものは忘れてしまったというような気分なのかな?と想像しています。

ROB:沢山の人が関わった作品なので予期しないことが起きて、本当に面白い作品だなと思います。実はディレクターさんに初めて会って打ち合わせをした時、その一週間前にSabbrabellsがBOXセットの打ち合わせをしていたみたいなんです。僕は滅茶苦茶仲良くさせてもらっていたしローディーみたいなこともしていたんですが、その話を聞いた時はこんなところでも身内の人達を感じるとは思いませんでした(笑)

Sabbrabellsと言えば先日のAnthem主催のHeadstrong Fes.でのライブは凄かったですね。

ROB:僕も見に行っていましたよ。ずっと泣いてましたね。僕らもまたやると思っていなかったし。
ここでROBさんにバンドのメンバーについてお話を聞かせていただけますか?
先ずは今回の新曲を作った梶谷禎さんから

ROB:僕がメタルバンドのギタリストに求めていることは華麗なソロよりもバッキングで曲を形作ってくれることなんです。Schenker兄弟ならMichaelよりもRudolfの方が好き。彼ってそういうリフを刻むタイプのギタリストなんですよね。過去に一回だけセッションライブに参加したときにギターを弾いていたのが禎君で「こんなに良いギターを弾くんだ」と思いました。2007年頃かな?丁度バンドのメンバーチェンジがあった頃で、その時彼をバンドに入れたいと思いました。何故ならあのバッキングが欲しいから。バンドに禎君のようなタイトなバッキングをする人が入るのは初めてだったと思います。

梶谷さんが新曲全ての作曲を手掛けていますが、作られる曲についてどう感じていますか?

ROB:今回の新曲の中で一番禎君らしいのはHide and seekでしょうね。どちらかと言えば彼はアップテンポな曲を作る方が得意だと思う。

もう一人のメンバーの佐藤潤一さんはどのようなキッカケで?

ROB:潤ちゃんが東京に出てきた時に初めて会ったミュージシャンが僕なんです。丁度魚雷をやっていた時でドラムはサポートのメンバーだったんですけど、一週間後のライブ前に急にいなくなっちゃったんですよ。ライブが出来ないから方々に相談して、堀江睦男さん(Scheherazade ex-Starless、Terra rosa他)から「弟子が東京にいるから任せれば良い。上手いから心配するな」と紹介してもらったのが弟子だった潤ちゃん。会ったこともないし、ライブまで一週間しかない状況でいくら上手いと言われても魚雷の曲って難しいから今回は無理かなと思いましたね。とにかく急いで会うことになって、JRの大塚駅でね(笑)魚雷の音源を全部持って待っていたらニコニコした潤ちゃんが現れて、「わかりました!全部やっておきます!」と返事も良いし愛想も良いけど「こんな難しいものそんな簡単に出来るわけない」と心の中で思ってました(笑)

その後一回だけリハに入れたんですけど他のメンバーとも無理だろうなと思っていたんです。全然期待していなかったけどいざ合わせたら誰よりも上手くてビックリしちゃった(笑)その後魚雷が解散してMephistophelesの復活に繋がるんですけど、潤ちゃんにメンバーとして誘ったら「僕で良ければ」という返事をもらえてそのままですね。

佐藤さんも一緒にやりたい気持ちがあったんでしょうね。

ROB:何だかんだ今のメンバーの中で一番付き合い長いですからね。ヴォーカルって曲の土台となるドラムを凄く気にするんです。今の僕は潤ちゃんのドラムじゃないと歌えないんですよね。お互いの呼吸が分かっているので物凄くやり易いんです。上手くても呼吸が合わない人とはイライラしちゃいますね。また彼はメンバーの中で一番おっとりしているのでメンバー間のパイプ役になっています。ドラムはスゲェ強いですけどね(笑)

ギターのHIRO君はLa’cryma Christi時代のことを全然知らないんですよ。出会ったのはMorrie(Dead End)がやっているCreature Creatureのライブなんです。ライブの彼を聴いたらトーンが凄い良くて良いギターを弾いていたんですよね。少し足立祐二(Dead End)っぽいんですけど。Creature Creatureも気に入っていたのでHIRO君とは直ぐに意気投合して遊ぶようになりました。実はバンドをやるに当たって飲み友達をメンバーにするのは嫌だと思う人間なんですよ。オリジナルメンバーだったギターの沢井比河流(成田☆一家、ex-Maphistopheles)が脱退するんですけど、彼はリフを刻むタイプじゃなくてメロディーを奏でるタイプのギタリストだったんです。その時に後任として思い浮かんだのがHIRO君。沢井比河流の後はサポートであってもHIRO君に参加してもらいたいと自分の中で勝手に決めていて(笑)それで直ぐHIRO君に連絡しました。

HIROさんのギターは音色も含めて凄く色気がありますよね。

ROB:そうそう!沢井比河流とはまた違うんですけど、HIRO君もギタリストのタイプとして自分の色を出す人なので、そういう自分の音を奏でる人がバンドに欲しかったからお願いしました。Mephistophelesの中で単純なスラッシュメタルじゃないところが出ている由縁はここにあると思っていて、ウチはギター二本でザクザク刻むバンドじゃなくて、一人がザクザク刻んでもう一人がメロディーを奏でているのがMephistophelesだと僕は思っているので、それを実行するにはHIRO君が必要だし、禎君も必要なんです。

ベースのhibikiについてなんですけど、Mephistophelesはリズム隊のメンバーチェンジが多いバンドなんです。前任者の話からになってしまいますが、ベースの前任者もヒロ(池田鷹浩)という名前でhibikiと同じくメタルのベーシストではないんですよね。これまでメンバーチェンジが起こる度に有名なメタルのベーシストの名前が挙がるんですが、僕としてはベースはメタルとは違う要素をバンドに持ってきて欲しいんです。メタルを分かっている人を迎えれば安心感がある、ギターはそれでも良いけどベーシストにそれを求めていないんですよね。それで前任者は上手いのでグルーヴで勝負するタイプだったんですけど、ウチの速い曲だとそれを生かすことが出来なくて脱退に繋がったんです。

そしてhibikiがバンドをサポートしてくれることにわけですが、その時点で彼のライブは一回しか見たことがない。しかも札幌でSaber Tigerと対バンした時に知り合ったのでライブを客席で見てもないし、この時はサポートをお願いしようとはまだ思っていなかったからジッと彼を見ていたわけでもない。それで話が戻るけど前任者が脱退する時に有名なベーシストが候補に挙げられていたけどhibikiにお願いしたいなと思って。この時彼はSaber TigerやSilex、Mardelasといくつもバンドをやっていたけれど、それでもサポートをお願いした一番の理由はhibikiのことをよく知らないから。バンドって仲良し小好しだけではなくて、知らない人とやって意見交換することも大事だし、一緒にやってどうなるか読めないというのも面白くて大事なんです。ウチはドラムが潤ちゃんなのでどんなベーシストでも形に出来ちゃうからだと思うんですけどね。知らない人=新しい血が流れることによってバンドが甦るし、僕も色んなことを考える選択肢の幅が増える。他のメンバーもコミュニケーション取らなければならないですから、やはりメンバーが変わることはそれまでのバンドではなくなるんですよね。hibikiに関して言えばSaber Tigerにいるぐらいだし、それだけで実力者ということが分かるじゃないですか?そんな安心感もありますよね。それに彼って頭が良いんですよ。僕よりも一回りくらい年が離れているけど、サポートだからといって遠慮せずバンドがどうしたら良いのかハッキリ意見も出してくれる。こういうのってバンドにとって大事ですよね。そんなに口数多いタイプじゃないんですがバンドに新しい風を吹かせてくれています。

僕はもう51歳なんですけど51のオッサンは51のオッサンの脳でしかないんですよ。Mephistophelesは現役に拘っているけれど、51のオッサンの頭では現役で居続けるのは無理です。そこで今を生きている若い人の意見というのは理解できないことが一杯あるけど現在に拘るなら大事なものなんですよね。「今ってそうなの!?」って分からないことがあるけど、今がそうなら仕方がないじゃないですか?「俺たちの時代はこうだった!」と言う人もいますけど今はその時代ではないし、僕は自分のバンドではそういうことをやりたくない。勿論経験豊富な世代が言っていることの良さも分かるし全否定もしていないですが、新曲を書いていくことを考えた時にそれは必要ないかなと僕は思います。だから僕は自分のやりたいことを下の世代の人に聞いてみる、それに対する意見を聞いて現代の感覚を理解して取り入れたいと思っています。hibikiの持っている感覚は僕には無いものなので。勿論僕しか出来ないことがあるので舵を取るのは僕だと思いますけど、創っていくのは僕ではないと思っています。やっぱり音楽とかクリエイティブなことって「今」ということが大事じゃないですか?悔しいけど僕は「今」の人間ではないからMephistophelesが現役のバンドとして居続けるためには「今」の人の意見が重要なんです。ちゃんと何がどうだ、ということを理解していないけど出された意見を飲むしかない。それをオヤジの脳でどう消化するかですよね(笑)

先日NoBさん(MAKE-UP、DAIDA LAIDA、OSAMU METAL 80s)にインタビューした時「自分の好きなものだけじゃ今の若者には響かないから、現役でいるためには彼らがどういうものを好きなのか勉強してそれを取り入れている」というようなことを言っていたので、考えていることは同じだなと思いました。

ROB:そうですね。具体的な感じじゃないですけどhibikiがそういうバランスの良いエッセンス的な存在としてバンドにいて、面白いなと思っています。

新作がリリースされたばかりですが次回作の構想などありますか?

ROB:次はメンバーが一曲ずつ提供して作りたいなと考えています。勿論サポートメンバーであるHIRO君やhibikiにも作ってもらってね。今のメンバーで、全員で書いたものをアルバムにしたいです。多分今作よりももっと訳が分からなくなるかもしれないけど、きっとジャパメタになりますよ!普通に。バンドの色はもっと変わっていくと思う。でも中心に梶谷禎がいるでしょうね。もしかしたら潤ちゃんはまたインストかもしれないし。
今回はたまたま面白い形で完成したので、次もそういう風に繋げていきたいなと思う。また今のチームで作ることが可能だったら良いですけどね。

既に10/7(土)から始まっているツアーの意気込みを聞かせてください。

ROB:お客さんには今のMephistophelesを楽しんでもらえたら良いな。それで次はどうなるんだろう?というワクワク感や期待を持たせることが出来たら最高だなと思います。昔からあるバンドだけど現役なので次があるじゃないですか?これを見たら終わりというラインは無いですよね?だから次が楽しみになるライブをしたいですね。

本当にLurking in the darknessをどうするか…、本当にやらないままなのか…、このインタビュー時点ではやらないです(笑)

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投稿者: 管理者

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