河野陽吾 キーボードクリニック レポート

河野陽吾(MAKE-UP、GRAND PRIX、URUGOME、OSAMU METAL 80s他)が自身初のキーボードクリニックを開催した。以前は某音楽学校で講師をしており、現在は個人レッスン(キーボードだけでなく他の楽器や、バンドアンサンブルなどを教えてくれるらしい)も受け付けている。

今回のクリニックは町田駅から徒歩5分ほどの場所にあるYokota Base Studio。オーナーの横田氏はギタリストとしても活動しており、その交友関係からしばしば今回のようなクリニックが開催されている。(後日開催予定のGLAY氷室京介のサポートを務める永井利光のドラムクリニックや寺沢功一、リョータ親子のベースクリニックのポスターが店内に掲示されていた)

以前キーボードの個人レッスンを受けた生徒が横田氏に提案して開催に至ったわけだが、本日は「手弾きにこだわったキーボードクリニック」ということでグリッサンドやパーカッシブな奏法に加えて、有名曲をどのように弾いているか目の前でプレイという内容で進められた。

時間になり拍手に包まれて登場する河野。早速有名曲に合わせての演奏が披露された。曲目はDeep PurpleHighway Star(Made In Japan Ver.)。先日のオサメタのライブでも演奏された曲だが忠実に、楽々と弾いてみせる。驚いたのは流れている音源とのズレが全く感じられなかっただけでなく、じっくり腰を据えて聴き比べれば違うのかもしれないが音色も原曲に溶け込んでいて違和感を感じなかった。
(プロなのだから当たり前という意見があるかもしれないが、音色も含めた音源をそのまま再現した演奏はやはり並大抵のことではないと思う)

改めてプロの技術を目の当たりにした参加者はその手元と足元を凝視し、そのプレイにじっと耳を傾けている。また印象的だったのが片方の手で曲のフレーズを弾いていながら、もう片方の手で柔らかいタッチで音を加えていたことだ。私が聴いた中ではアドリブのようであるがメインで聴かせるメロディーの邪魔にはなっていなく、隠し味的な存在感の音でリズムの強調や音の厚みを感じられた。

曲を終え、トークタイムに入る。「こうやってクリニックを開催するのは初めてで、キーボード経験者は何人ぐらいいる?」と河野が聞くと、6人程の挙手があった。それを受けて「同じ機材を使って弾いている人で出る音の違いを感じて欲しい、またプロと一緒に演奏できるまたとない機会だから遠慮なく参加して欲しい」と話していた。会場に置かれているキーボードは全部で3台。Nord社Nord Electro(オルガンやピアノ、クラビネッとの音など)はユーザーが多く、Roland社JP-8000(デジアナシンセ)はFacebookでも紹介されていた1台、そしてKORG社MUSIC WORKSTATION(オルガン、ピアノ、シンセと幅広い音を出せる)を紹介。MUSIC WORKSTATIONについてはプリセットされている音ではバンドのアンサンブルにおいて埋もれがちなのでひと手間加えないといけないばかりか、操作が複雑なせいで現場での音作りや調整が大変だと話していた。そんなMUSIC WORKSTATIONも含めてどれもライブで使用しているもので、特別新しい機種ではないとのこと。

続いてオルガンのサウンドや、レズリースピーカーについてのレクチャー。Nordに搭載されているオルガンの元々のサウンドと歪ませたサウンドの違い、レズリースピーカーとは何ぞや?というところからのサウンドの変化を実演して参加者に聴かせていき、同じオルガンでもKORGのシンセサイザーKARMAで実演。シンセサイザーの強みとしてスイッチにエフェクトを登録することでサウンドのバリエーションが大幅に広がる他、ワウのエフェクトを登録して「ワウを使うと何故か口も一緒に動いちゃうよね」とギターのようなサウンドを聴かせてくれた。

さてこの時点で既に1時間近く経過していたが、その濃すぎる内容に時間の感覚が確実に狂わされている。

そして今回一番盛り上がったのはJourneySeparate Waysだ。

イントロフレーズの運指から始まり、なぜそのようにしているのかを説明、そして参加者のうちのキーボード経験者に弾いてもらいその実用性を体感させていた。プロとアマチュアが同じセッティングのキーボードで同じ曲のフレーズを弾き、会場はそれを聴き比べることになるのだが、その差を改めて感じさせる場面だった。やはり運指に限らず音作り、リズムの取り方、音の長さという細かい部分をそれぞれ研ぎ澄ませての演奏になるわけで、この曲について何をどうすれば原曲に近づけるかを示してくれていた。中でも興味深かったのはリズムの重要性や音の長さという、当たり前に注意すべき点でありながらそれがちゃんと出来ていない人が多いということまで触れていたところだろう。ここではバンド演奏において基本であり重要とされるリズム感や音の長さ、つまり曲のリズムを理解することと音を何拍出すのかといったことについて熱弁していた。

河野と司会を務めていた横田氏も言っていたが、この曲は単純なフレーズであってもとても練られており、紐解けば紐解くほどその奥深さに気付かされる。

休憩をはさんで質問コーナーへ入る。以下のような質問が寄せられていた。

・キーボードで弾きにくい曲は何?

キーボードレスでギターのリフが強力な系統の曲と質問に答えてくれたのは勿論だが、そういった曲にキーボードを入れる際のアイデアやどのように対処しているかを回答していた。

ここでは話が飛躍してシンセサイザーが好きになったキッカケの話になったが、河野はKeith Emerson(Emerson,Lake&Palmer)がキッカケで、Eddie Jobson(U.K.)も大好きとのこと。とりわけEddie Jobsonについては「この人以降でキーボードヒーローと言われている人はいない」というほど賞賛していた。

・オルガンのロータリースイッチを切り替えるタイミング

これは実演しながら説明。ロータリーを回すことによって音の迫力が違ってくるのを体験できた。

・Separate Waysのギターソロ後のキーボードはどのように弾いている?

先ずは音源を流してどんな音が流れているのかを参加者に聴かせた後、河野が実際に弾いてみせる。面白いのは音源で流れている音を取捨選択していたことで、ただ完コピするだけでなくどの音を弾くことが最適なのか河野の答えが聞けたことだと思う。

・以前Hughes&Ketnerのプリアンプを使っていたが、どのような使い方をしていたのか?

マニアックなファンからの質問で、シュミレーターとしてレズリースピーカーの代用だったとのこと。他にはエフェクトをかけるために使っていたそうな。

質問の中に「バンド演奏の中で埋もれないオルガンの弾き方」というものがあった。実演ということでRainbowKill The Kingの音源に合わせて河野が弾く。そこで今回のクリニックのレッスン内容にあったグリッサンドとパーカッシブな奏法が披露された。グリッサンドを入れるタイミングや、河野自身が手のどのあたりで鍵盤を弾いているのかを説明。パーカッシブな音を入れる際のコツや鳴らす鍵盤の選び方についてはキーボードならではであったし、非常に興味深い内容であった。

一通り聞いて思ったことは弾く人のリズム感とタイム感(音をどれくらい伸ばすのか、切るのか)で印象が変わってくるということ。よく言われる複数のプレイヤーが共通の曲を弾くと同じものは一つして無い、つまりはその人のセンス次第ということを理解させる内容だった。センス次第というものの、ここで説明されていたことは他の楽器にも当てはめて言えることで、会場にいたキーボード以外の楽器経験者にとっても興味深い話が繰り広げられていた。

終盤に差し掛かりSeparate Waysで使われていたシンセサウンドの万能さを紹介。というのも様々な曲で「それっぽく」様になっていて、色んな曲にマッチすると河野は言う。実際にVan HalenJumpを弾いてみせるがかなりの再現度を誇っていた。続いて今回唯一のオリジナル、Grand PrixBodiesを参加者のリクエストでイントロ部分を弾いて見せてくれた。Jumpに続いてその再現度は高く、筆者の大好きな曲の一つでもあるのでどうしてもニヤけてしまっていたのはここだけの話(笑)

そしてついに時間が来てしまった。奏法や音作りなど一つ一つ丁寧に解説するだけでなく、そこから派生して出来ることの紹介までしてくれて濃密な時間だった。横田氏もまだまた掘り下げていく内容があるとして、早くも第二回を開催したいと話が出ていた。詳細が決まれば河野のFacebookやYokota Base StudioのHPなどで告知されるだろう。

キーボーディストだけでなく河野ファンや純粋な音楽ファンにとっても今後の音楽ライフを楽しむ知識が得られる貴重なクリニックだった。そこでいくつか参加者のコメントを紹介する。

1. 本日のクリニック参加の理由

・河野さんのクリニックは滅多にない機会だと思ったので。

・MAKE-UPからのファンで、かぶりつきで見たくて来ました。

・ノれるキーボードを弾けるようになりたくて。

・キーボーディストではないけれどいずれシンセサイザーをやりたいと思っていて、河野さんの色々なテクニックを目の前で見れるチャンスなので参加させていただきました。

2. クリニックの感想や興味深かった点

・とにかく音にこだわっていること、やっぱり凄いなと思いました。このことを踏まえてMAKE-UPの曲を聴きます。

・トークが面白かった。

・目の前で弾いてくれたオルガンの弾き方がとても勉強になった。

・曲の簡単なフレーズを練習して、次回は積極的に参加してみたいと思いました。

他には「ギターを弾いてもらいたい」「キーボードや音楽のルーツについての話を聞きたい」などがありました。昔からのファンだけでなく、自身のスキルアップのために参加されているキーボーディストの方がチラホラと。

そして既にFacebookで発表されているが、キーボードクリニックの第2弾が12/7(土)に開催決定!今回JourneyのSeparate Waysの解説が好評だったが、次回はEuropeThe Final Countdownを取り上げるとのこと!

巷の音楽を理論的に解説している人気TV番組さながら、沢山の「へぇ」や「なるほど!」が満載の河野陽吾キーボードクリニックは楽器の経験が無くても、音楽が好きならば間違いなく楽しめる内容。音楽スタジオが会場なだけに収容人数が限られてしまうので、ソールドアウトする前に予約がお勧め!

またYokota Base Studio開催のクリニックは、クリニック終了後に講師のアーティストとのアフターパーティーが開催されることが多い。自身のプレイについて相談するのも良し、ファンとしてアーティストとの会話を楽しむのも良し。楽しみ方は人それぞれだがクリニック、アフターパーティー共に濃い内容でお届けしているので、興味さえあれば忘れられない楽しい時間を過ごせることだろう。

次回の詳細決定!↓

河野陽吾 Official HP
河野陽吾 Faceboock

Yokota Base studio HP

投稿者: 管理者

音楽に興味を持ってもらうために音楽自体へフォーカスする他、別の角度から音楽へ興味を持ってもらえるよう情報発信していきます。

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