坂川美女丸 「しあわせの月」Interview

既にDVDで発売されている「しあわせの月」がCDでも発売ということで、改めて楽曲について語ってもらった。
CDはライブ会場の他にホームページでも通販をしているので、気になった方は手を取ってみては?

先ずは表題曲「しあわせの月」から話を聞かせてください。

この曲はバラードなんですけど今回の曲の中では一番古い曲ですね。作ったのは10年以上前……90年代後半になるのかな?
長年ライブでは演奏していた曲だったんですけど音源化していなくて、ファンの中でも隠れた名曲と呼ばれて、ずっとそれを望まれていてこの時を待っていたみたいです。ワインのように寝かせて、寝かせて熟成させて、満を持しての音源化です。

アレンジとかは当時と殆ど変わっていなくて、出来の方も良いものになったと思います。

曲を初めて聴いたときに、カブキロックスのアルバム「勇気」に入っていても違和感を感じないな、と思いました。

それはあるかもしれないね。勇気からしばらく後に出来た曲だからセットにして語るのは難しいですけどね。カブキロックスを脱退する少し前くらいかなあ。
アレンジに関してはその時の流行りなどは全然意識してないので、シンプルに良いと思う形に仕上げていった感じです。曲が出来た時点でアレンジも完成されていて、最初からどこか変えたい、というところも見つからないくらいベストなものが出来ました。

音源とライブの違いはライブだとアコースティックギターが無いくらいかなあ。

先にDVDでのリリースとなったのは何か理由があったのですか?

先ずはこの曲を世に出したい、というところから始まったんだけれどもそこに映像の話が乗っかってきた、というのが実状です。

今回のCDはアレンジからプロデュースまで自分でやっているので、より思い入れの深いものになっています。

続いて「名もなき丘の上で」についてお願いします。

この曲はミディアムテンポの曲でやはり古い曲になるのですが、「しあわせの月」よりは新しいです。音源ではフェイドアウトして終わりますが、ライブではソロを完結して曲も終了します。
その日の演奏曲中何曲目にやっているかとか、その時の状況でエンディングが変わっていきますね。

この曲を聴いて一番印象に残ったのが、サビで歌メロの裏でギターが同じメロディーを追いかけていることなんです。今までに聴いたことないものだったので 「何故このアレンジにしたのか?」「何なんだこれは?」と凄く不思議だったんです。これにはどういう狙いがあったんですか?

そういう感想は新鮮だし嬉しいですね。この曲はある意味客観的に聴けなくなっている領域まで来ていて、今となっては定番の一曲で「O・EDO」「虹の都」と同じレベルです(笑)
このメロディのインスピレーションが作曲のスタートでしたので、テーマメロとして歌のバックでも流したという感じです。これも自然に行き着いたもので、考え抜いて「こうしよう!」という狙いの上では無かったです。
歌と全く同じように弾いてはいなくて、微妙に崩したり、変えたりしているんですけどね。

「Sakura想い」もまた叙情的です。

「Sakura想い」は今回のリリースのために作った曲で春の歌になっています。丁度発売時期に合わせた曲です。だから作曲した時期が20年近くも離れている(笑)

「Sakura想い」ですが、また最初の感想として美女丸さんのルーツである70年代のハードロックの匂いを感じたんです。イントロとかLed Zeppelinがちらついたり、曲の展開を予想しながら聴いていると、70年代のハードロックバンドにあるようなワンコーラス終了後にドラムが入り、他の楽器が加わっていく、という流れが想像出来たんです。やっぱりルーツは滲み出てくるしブレないなと思って聴いていました。

ドラムがズッタンと入るのが想像できますよね(笑)またマイナーコードのベース音を一音ずつ下降させていくと天国への階段的なノリが出てくるので言わんとすることはわかります(笑)

自分の音楽はやはり基本的に70年代の音楽の影響が滲み出てしまうからね。ギターソロとか自分の中でイメージしていたのはPink FloyedのDavid Gilmourです。アコギでPink Floyedはないだろうというのはあるんだけど、分かる人には分かるかな、みたいな(笑)
物凄くパーソナルで狭い世界をアルペジオで表現し、ギターソロでバッと世界が開けるように少しスペイシーな感じで出したかったんです。実際に宇宙まで飛んでいくイメージで弾いているので。
何故かアコギなのに最近自分が弾いたソロの中では一番気に入っている(笑)これが録れたときは本当に感動してガッツポーズものでした!

アコースティックギターなので微妙な音のニュアンスが中々出ないんですよ。エレキよりもっと音量やタッチに繊細さを求められるので。
エフェクターもトーンコントロールも無いから、完全にピッキングのニュアンスだけで思った通りの音が出たのは本当に嬉しかった。

出だしのチョーキングに魂込めていますよね。

最初はエレキで弾こうかと考えたんです。でも全体の流れにアコギの方がハマったんですよね。ギターやっている人なら分かると思いますがアコギでチョーキングするのは結構指が痛いんですよ(笑)
またこの曲はそれぞれチューニングが違うギターを2本重ねているんです。普通のチューニングではなくて変則的なので、レギュラーチューニングで弾こうとすると複雑な運指になって大変なことになります(笑)ファンの方がDVDから音を拾って弾いた動画をみたんですけど、変則チューニングということを知らないで物凄いことになりながらレギュラーチューニングで弾いていました(驚)僕はあんな風に弾けないです(汗)

そんな曲なので混乱しないようにギター1の譜面とギター2の譜面を用意してレコーディングしました。
ライブで演奏するときもカポが必要になるんですが、チューニングの兼ね合いでやりたい方のギターを断念したりと、自分の中ではライブで再現しようとすると手間のかかる曲です(苦笑)

他の2曲は半音下げチューニングになります。
今やっている剣☆美☆氏(ケンビシ)というユニットも半音下げです。

これだけ幅があるので昔から好きだった人も、最近好きになった人もどちらも楽しめる一枚になっていると思います。

意外と「Sakura想い」が完成まで時間かけずに作れて、思った以上に良い曲が書けたなと思っています。他の二曲には和音階があまり出てこないんだけど、この曲はたっぷり出てきます。
またアコースティックなんだけどソロに力を入れて弾いています。最近レコーディングした中でもフェイバリットですね。

今回のベースやドラムのレコーディングには美女丸バンドのメンバーも参加しているのですか?

「しあわせの月」「名もなき丘の上で」の二曲は美女丸バンドのメンバーが参加しています。「Tales Of Astral」というアルバムをレコーディングした時、一緒にレコーディングをしていました。だから歌とギターをレコーディングするまで結構年数が空いているんですよね。

ここまで寝かせていると半端なものは作れないので、作り込んで、作り込んでレコーディングに挑みました。CDにはインストバージョンが入るので歌入りでは聴こえてこなかったギターの音が聴こえてくる、なんていうような楽しみ方もあると思います。

音数も少なくてシンプルに作っているなと思ったんですけど……

基本的には歌メロを生かすようにギターを弾いていて、一本でやっているように聴こえていても実は同じように弾いたトラックを何本も重ねたりしています。この点が今回の拘りでもあります。
以前にも話しましたがレコーディングするにあたり締め切りも無く、時間の制限がなかったので例えば音作りに関しても何本もマイクを立てて、気に入った音になるまでずっと試行錯誤していました。

ボーカルのレコーディングはどうでしたか?

「しあわせの月」「名もなき丘の上で」はずっとやってきた曲なのでスムーズに終わりました。それでも長年の間に歌い崩した的な部分もあったので、何カ所かは作曲当初の形に修正させてもらいました。
「Sakura想い」に関してはリズムが取りにくかったみたいで結構苦戦していましたね。

意外とアコギ1本だけの演奏に合わせて歌うのは大変なんです。クリックを流しながらでも難しくて、僕がギターで歌メロを弾きながらディレクションしたり、一番時間がかかりましたね。メロディーにも微妙な間があったりしたので、それも難しくなった一因です。

CDも発売されて、これからのライブなどの予定はありますか?

特にこのCDの発売に向けたライブは予定されていないんですが、今決まっているライブ会場での販売はあります。ライブ会場の他にはホームページでの通信販売もやっています。

今現在の自分の活動が「ソロ」「カブキロックス」「剣☆美☆氏」「セッション」「プロデュース」と五本立てになっているので、スケジュールの調整や自分のモードを切り替えることが大変です(苦笑)

例えば今Mercuryというガールズバンドのサウンドプロデュースをしているのですが、昨年彼女達の御披露目ライブの日は大変でした。

中にはライブ未経験のメンバーもいたのでリハーサルでの音のチェックの他に、ステージ前の準備であったり色々と気を使わなければいけなかったのに加え、自分自身もEARTHSHAKERの甲斐貴之さん(Ba)、SHOW-YAの五十嵐”sun-go☆”美喜さん(Gt)、FEEL SO BADの山口”PON”昌人さん(Dr)に元々ギタリストのマーティ(Vo)とのセッションバンドで参加することになっていました。本人と一緒に本人の曲をやるって物凄いプレッシャーを感じてました。さらにその日がラストというDisqualiaというバンドにも関わっていたのでこれ以上ないってくらい大変でしたね(笑)

余談としてMercuryのメンバーに「~準備した?」とか「弦張り替えた?」とか話していたらsun-go☆さんに「お父さんみたい」とか言われたり(笑)

一番大変だったのは自分の気持ちの持っていき方。ステージに出るときはテンションを上げて自分のロックを体現していかなければならないのに、プロデュースといった裏方に回るときは冷静な判断をしていかなければならないという正反対のことを求められるからです。冷静→テンションMAX→冷静という振れ幅は大変でした。それに加えて自分のステージの準備もありますからね(汗)
この日唯一助かったのはDisqualiaのメンバー達がまだ若いのに個々のスキルが既に完成されていたので、自分はただステージのソデでラストライヴの感慨にふけっていれば良かったという(笑)。

Mercuryさんの話が出てきましたけどどんなバンドなんですか?

ライブを見てもらえれば一発で分かると思うけど、見た目的にはとても華やかですね。演奏の方はまだこれから伸びしろがあるかな。年齢が20そこそこの若くてキャリアの浅いメンバー達なんですが、作る曲とか歌は良いものを持っていると思います。実際ライブハウスのスタッフのウケが良くて、80年代のハードロックの雰囲気を持ちながらキッチリした歌メロのある曲をやっているという。こういった音楽性で活動しているガールズバンドは意外と少ないみたいで。オリジナリティが際立っているのでその他大勢に埋もれない、そういう意味で今のガールズバンドの中で抜きん出ていく可能性はかなり有ると思うんですよ。各メンバーもそれぞれのキャラの中で良いものを持っていますしね。まあ、そういった部分が無いと自分も関わらないし(笑)大変だけどやりがいもあるし、どんどん良くなっているので応援したくなります。
ライブ会場限定で彼女達の音源2曲が入ったCDを販売しているので是非聴いてみてください。

また最近のトピックとして子供ばんどの湯川トーベンさん(Ba)、TENSAWの富岡”Grico”義広さん(Dr)といった日本のロック創世記に活躍した人達とライブで共演されましたが、どういった縁で実現したんですか?

二俣川somedayというお店はマスターの守之介さんの人柄からかレジェンドと呼ばれる人達が結構出演するんですよね。外道とか元キャロルのメンバーとか。僕もマスターには良くしていただいていて、その縁で守之介さんのバースデーライブに声をかけてもらったという感じです。僕がギターを弾き始めた時には既に活躍されていた人達なので、今回ライブで共演できて光栄です。
TENSAWや子供ばんどは外道やシュガーベイブと一緒に当時聴いていました。TENSAWはその名前を出すだけでロック好きの共感を得られるくらい格好良かったし、子供ばんどもヤマハでよくインストアライブをやっていたのでそれを見に行っていましたね。

今後の予定を教えてください。

10/14(日)に二俣川SOMEDAYで守之介さんと組んでライブをします。10/19(金)には同じく二俣川SOMEDAYで剣☆美☆氏のライブがあります。サポートでの参加ですが10/27(土)に目黒The Live StationでA-CHIEFのライブです。この日はA-CHIEFだけじゃなくAURAとDefyerとの共演になります。
カブキロックスも今後決まれば告知されるので、ファンの皆さんはホームページやTwitterなどのSNSで今後の活動予定をチェックしていただければと思います。

坂川美女丸 Official HP
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投稿者: 管理者

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