歌菜子 Interview

2008年にTVアニメ「ポケットモンスター ダイヤモンド&パール」のED曲『あしたはきっと』でデビューしたシンガーソングライター歌菜子が昨年デビュー10周年を迎えオリジナルアルバムの発売、そして来る5/24(金)に記念ライブを開催する。
アーティストでありながらMOJOSTのアーティストを支えるマネジメントの仕事をしている彼女にインタビューしてきた。
ライブへの思いは勿論、自身の所属するMOJOST愛が溢れるインタビューだった。

歌菜子ファン待望のワンマンライブ間近ですが、開催に至るまでの経緯を聞かせてください。

歌菜子:元々デビューしたのが2008年で、前回のワンマンライブが2010年なんです。以降はちょくちょくイベントだったり他のアーティストさんと一緒にライブをすることがあったんですけど、自分のワンマンはやってこなかったんですね。アニメのタイアップでデビューしましたけど数も多くないですし、オリジナル曲だけで活動していました。
昨年「デビューして10年か」と思ったときにMOJOST社長の寒河江さんからの後押しもあり「アルバムを作らなくちゃ!」と意欲が湧いて、そうして出来たのが「Again」です。

アルバムを作ったからにはライブをやらねば!という単純な理由がありつつ、MOJOSTの福山(芳樹)さんを筆頭に、高橋(洋樹)さん田村直美さん宮崎歩さんサイキックラバーさん幡野智宏吉田達彦デラスタ(DelightStyle)、とか皆さん凄いアーティストさん達ばかりの現場をご一緒させていただいて、そこでいつも言葉にならないような心が暖かくなるものをもらっているのを感じているんです。自分にも応援してくれるありがたい人達がいらっしゃるのですが、会うと「ライブをやらないんですか?」と聞かれるんですね。そういう人達に自分もステージに立って「福山さん達みたいに歌で何かを届けられたら」と強く感じたのも理由の一つです。

今回のライブはギターに寒河江(康隆)社長、ドラムに麻生祥一郎、キーボードにPONCHAN(横田昭)とMOJOSTお馴染みの方々に加えてベースの木下きえというバンドメンバーですが、どういった理由で選ばれたのですか?その中でもMOJOSTのライブには初登場の木下さんからお願いします。

歌菜子:このメンバーだったらベースはてつろうさんがベストなのは間違いないと思うんですけど、そうするとF-BANDの音になってしまうんですよね。今回のライブは自分のルーツや音楽性、デビュー前から今までやってきたことを見てもらいたいので、そこを考えたときにF-BANDの皆さんだと自分のルーツやこれまでの活動という部分が薄れてしまうんです。MOJOSTの皆さんは私の人生の中でも大事で大切なファミリーであることは間違いないんですが、MOJOST以前に出会った大切な仲間がいて、その中でこのルーツの部分の音を補ってくれるのが木下きえちゃんで、一個でも過去に自分の音楽を表現してくれた人をメンバーに入れたかったんです!

彼女は音楽学校の同級生で一緒にガールズバンドを組んでいたんですよ。そして彼女達と一緒に過ごした時間が自分にとってはとても大切な学生時代の思い出で、現在まで自分が音楽を続けてこられたキッカケにもなっているんです。

子供の頃から歌手になりたいとずっと思っていたんですけど、学校で彼女達とバンドを組んだことで人前で演奏することの喜びを感じるようになり、もっと多くの人に自分の歌を聴いてもらいたいと思うようになったんですよね。

実はこの頃に作った曲がアルバムの中に入っているんです。彼女はベースの腕は勿論ですけど、当時この曲を弾いていたのでお願いしたいなと思いました。
5、6年ぶりくらいに「ベース弾かない?」っていきなり連絡して(笑)「久し振りなのにいきなりそれ!?」みたいな反応だったんですけど快く引き受けてくれました。

ギターが寒河江社長なのはレコーディングでギターを弾いているということもありますが、MOJOSTに入ってからの5、6年間で最も身近にいた人で、私のことを良く理解してくれて信頼できる人だったのでライブでも弾いていただきたいと思いました。

麻生さんにお願いしたのは、そこにいてくれるだけで安心できるんです。演奏力についても申し分ないのは勿論、振り向いたらいるというだけで心強いんですよね。

PONCHANは普段から音楽的な相談をしている人で、福山さんやかなポンじゃない関係ないことでも連絡をするんです。知識も豊富ですしあのキャラクターで「色んなことをやろう!」と言ってくれるのもあってキーボードはPONCHANにお願いしたいと思いました。

福山さんにゲストで参加してもらおうと思ったのは一緒にMOJOSTを立ち上げたファミリーでもあるし、前の事務所の時からご一緒させていただいていて、今回のアルバムに収録されている『一番星と君と』は福山さんとの出会いの曲でもあるのですが、人前でちゃんと歌ったことが数回しかないんです。既に福山さんがセルフカバーして音源としてリリースされていますが(「鵺の森」収録)、アルバムでやっと私の歌でも音源化されたのもあって、二人で演奏している姿を皆に見てもらいたいな、私のワンマンに出演していただきたいなと思ってお声がけしました。

先程ご自身のルーツやこれまでの活動を感じられるライブにしたいと話されていましたが、音楽のルーツはどういうものだったんですか?

歌菜子:子供の頃から漠然と歌が好きで歌手になりますと言っていたんですけど、音楽的なルーツとして「これだ!」というものがあまりないんです。小学生の頃に劇団に入って演技を学ぶんですけど、そこで人前で自分を表現する楽しさや難しさを経験出来て、「こんなに楽しい世界があるのか!」と演劇を長くやりたいと当時は思っていました。
その頃に父親が何気なしに流したWhitney Houstonが主演した映画ボディーガードの主題歌『I Will Always Love You』を聴いたとき「凄く格好良い!」と小学生ながらに衝撃を受けて、「こういう格好良い歌を歌えるようになりたい」と思いましたね。それで歌ってみるんですけど自分の声質と合わなくて(苦笑)元々は松田聖子さんの曲みたいな可愛い曲が好きなんですよ。テレビで見て可愛いなと真似っ子したりしていたんですがWhitney Houstonに出会って「音楽ってアイドルだけしゃないんだ!」と気付いてから「歌をとにかく歌いたい」と思って毎日歌っていました。

音楽も色々聴くようになるんですが、自分が良いと思うことが多かったのは洋楽じゃなく邦楽だったんです。Mr.Children『シーソーゲーム~勇敢な恋の歌~』スピッツ『ロビンソン』をカセットテープのA面とB面に入れて、延々ずっと聴いてて、何故この曲が良いのかを考えていたら歌詞が良いというところに辿り着いて、そこからは作詞と言えるものではなかったけど物語的なものを書くようになりました。小学生ながらに雑な感じですけどね。そのうちメロディーをくっつけるようになって、デタラメな作詞作曲をやるようになりました。今思うと「これ何の曲?」というような良くわからないものもあったと思います(笑)

それで本格的に音楽をやりたいと思って中学生の時に、昔あった「バンドやろうぜ!」という雑誌のメンバー募集から大学生達とバンドを組んで、毎週スタジオ入って練習するようになりました。このバンドはオリジナルをやっていてロック系でもCoccoさんみたいな音がハードなものでライブ活動もしていましたね。

こうして振り返ると自分が音楽への関わり方のターニングポイントとしてまずは松田聖子さんがいて、次にWhitney Houstonがいて、続いてMr.Childrenとスピッツがいるんですけどこの時に加藤登紀子さん山下達郎さんともこの時に出会っているんですよ。子供ながらに良いなと思っていましたね。洋楽だとStevie Wonderの歌が「男の人なのにこんなに高い声が出て凄い!」と衝撃的でした。どっちかというとブラックミュージックが格好良いと思っていて、Whitney HoustonとStevie Wonderがキッカケで洋楽も聴くようになったと思います。ここからTotoJourneyを聴くようになりロックも格好良いなと思えるようになりました。

基本的には歌詞の良いもの、メッセージ性の強い曲が好きなので邦楽の方を聴くことが多かったですね。
学生の頃はBUMP OF CHICKENの歌詞が好きでした。暗いんだけど夢があるところに惹かれましたね。元々自分がポジティブな人間ではないので共感するところがありました。

歌詞を作る際に参考にしたり、勉強になった方はいらっしゃいますか?

歌菜子:百田留衣さんという作詞作曲編曲家の方がいるんですけど、男の人なのに女性の気持ちを歌った歌詞と曲を作らせたらピカイチの人で、ある時自分の好きな曲を並べてみたら半数以上が百田さんの曲だったんです。この人の作る曲の歌詞とメロディーラインが自分の好みとドンピシャで合うんですよ!曲を聴いて「こういう曲を私は歌いたい」と思いましたね。

あと加藤登紀子さんが歌った『時には昔の話を』という曲は紅の豚のストーリーともマッチしていて、ジブリ作品だから当たり前なんですが絵と曲が凄く綺麗に合わさっていて「こういうアニメと一緒に世界観を表せる歌って良いな」と思いましたね。

そして外せないのが魔法騎士レイアース『ゆずれない願い』。私なかよしっ子だったので、
なかよしっ子、りぼんっ子だったので!(強調)
子供の頃に一番好きだった漫画がレイアースで、一番好きだった曲がゆずれない願いだったんですよ。カラオケでも散々歌ったし、こんなに物語の世界を格好良く表現している人は誰?→田村直美という歌手か!とここで田村さんを知りました。後にポケモンの歌を歌うときにも「田村さんが歌ってる」と興奮したり、今MOJOSTでご一緒させていただいているんですけど生歌を聴いたときには死ぬかと思いました(笑)上手いというか、こんなに自由に声が出るのか!こんなに身体全体で音楽を楽しんでいるのかと驚きましたね。彼女は元々バンド(Pearl)でデビューした人だし音楽人として実力のある方だからなんですが「音楽ってこういうものだよね!」と思わせてくれました。

あー、良く良く考えると歌うことを決心したのは直美さんの歌を聴いたからかもしれないですね。「私、歌っちゃお!」みたいな(笑)

そういう影響で言えば幡野と吉田の二人との出会いも大きいですね。
幡野はキュウレンジャーを歌うことが決まってからMOJOSTに来て、一年間私が付いていたんですけど人前で表現する難しさ、デビュー作ですしスーパー戦隊という歴史のあるシリーズの主題歌で子供達を相手にするということで凄い葛藤していたんですね。幡野はポンッと変わって成長していくところがハッキリと見えて、人はこうして成長していくというところを間近で見て、アドバイスを送るだけじゃなくて自分もそうならなくちゃと思ったんです。今回ライブをやらなくちゃいけないと思ったのは彼らがいたからこそだと思います。

成長していく姿が刺激になった?

歌菜子:それもありますし、子供達が彼らを見る目を通じて音楽の良さ、素晴らしさを思い出させてくれたんです。大人が一生懸命頑張っていて、それを子供達がヒーローを見るような目で見て、喜んで楽しんでいる姿を見たら「音楽ってこういう力があるんだな」と感じて、自分もそういうものを発信できたらと思いました。福山さんや田村さん達もライブを見ていて同じように思わせてくれるんですけど、皆さんは私にとって大先輩なんですよね。幡野や吉田は年齢が近いこともあって同世代という感覚でいるので、その彼らからの刺激はまた別の種類のものでした。

私、本当はライブをやることについてよっこいしょの人なんですね。

腰が重いと?

歌菜子:長いことワンマンもしていませんでしたし、活動もアクティブな方でもないと自分では思っているので。年に数回しかイベントに出なかったりですからね(苦笑)

それでも年に数回ライブをやりませんか?と声がかかるんです。とてもありがたいことなのでその人達に自分の10年の集大成を見てもらいたいという気持ちもありますし、皆のお陰で10年やってこれました、今の私はこれです!とお見せしたいなと思っています。

私にとってライブというのは命懸けで、気軽に出来るものではないんです。理解してもらえるかわからないですけどいつまで経っても慣れないんです(苦笑)1曲、2曲イベントで歌うならまだしもある程度のボリュームがある、ましてやワンマンになると気軽にやれるものでは無くなるんですよね。楽しければ良いわけでもないじゃないですか?プロとしてお金を払って見に来てくださる方々に対して、そのお金以上のものを見せることが出来なければお金を貰う資格はないと思うんですね。お客さんが来てくれなきゃライブは出来ないので、そうなるとお金払って見たい聴きたいと思わせるものをやらなければならないですから。

だから歌を人前で歌って披露することに対して自分の全てを捧げないとステージに立てないなと思ってしまうんです。ステージに立つのは楽しいし、お客さんも温かいし凄くアットホームな雰囲気なんですが、「明日死んでも構わない」というくらいの気持ちでステージに立つし、歌っている最中も「これだけ楽しいのだから明日私は死ぬんだ」と思っているんです。笑 この前直美さんとこの話をしていたときも「分かる分かる!」と言ってくださって、皆同じなんだなと分かってから肩肘張らずにもう少し力を抜いても良いのかなと思えてきました。

自分が好きなもので、また大切なものであるだけに気楽にやれるものではないと?

歌菜子:なあなあにしたくないんですよね。自分の中で納得出来るライブをやり続けるとなるとアーティスト活動に加えて通常のMOJOSTの仕事は出来なくなると思います。普段の500倍位は気にしいになるし、ライブ前の2、3ヵ月前はかなり神経質になります。歌を聴いてくれる人をガッカリさせたくないんですよ。ただMOJOSTの仕事をやっていなかったら今回のワンマンは無かっただろうし、自分のペースで「やろう!」と決断するまでに時間がかかってしまうんですけど、このペースを維持できたらというところがあります。こんなこと言ったら社長に怒られちゃうんですけど(笑)そんな私のことを社長は知ってくれているので、私が行動に移すまで見守ってくれるので感謝しています。

ライブに対してストイックなんですね。

歌菜子:凄く感動的なライブもあれば、今日は調子悪いのかな?というライブもありますよね?こういう触れ幅があるのはいけないなと思っていて、自分がそうならないようにしなくちゃいけないとも思うんです。だから安室奈美恵さんが昨年引退した理由も共感できて、今まで完璧にこなしてきただけに一番調子が良いときに終わらせたいという気持ちは良くわかります。気にせず楽しんじゃえば良いと言ってくれる人もいるんですけどね。

福山さんや宮崎さん、サイラバさん達を見ていると、よくポンポンライブが出来るなと思います(笑)MCもこんなユルくて良いの?って思うんですがこの3組のライブはこれも含めて楽しいですよね。
と言いましたけど皆さんは努力の人なんですよね。福山さん達だけでなくMOJOSTの皆努力しているんです。ライブのクオリティを上げるだけじゃなくて活動のペースを保つにも努力されているんですよね。こうした努力をしている人達を目の当たりにしているだけに「自分は努力不足じゃないか?」と思うところもあって、ライブをやることに対するハードルが上がっていると思います。

さて、ライブの内容についても少し聞かせてもらえませんか?

歌菜子:アルバムの曲は勿論、ポケモンを始めとしたタイアップの曲もやります。イベントで一回だけしか歌ったことのないようなレア曲もやりますし、かなポンも1曲だけと言わず数曲やる予定です。アルバムに入れられなかった曲や新しく作ったばかりで音源として発表されていないオリジナル曲もやります!
これまでの総括と経験を重ねての今の私を見てもらいたいなと思っています。お披露目の場なので!

個人的にかなポンやオリジナル曲をやっている時の歌菜子さんの歌が好きなのでとても楽しみです!ポケモンなどタイアップ曲では可愛らしい特徴的な声質なんですが、オリジナル曲になるとガラッと雰囲気が変わって色気が増した歌になるところが好きです。

歌菜子:そう言っていただけるのは凄い心強いです(笑)仰られているようにアニソンを歌うときはアニメの世界や曲の世界のイメージを意識した歌い方をしていて、オリジナルでは自分の感情を乗せるようにしているので歌い分けたいのかなと自分では思います。どちらも一緒になっていた方が良いと思うんですけど、どちらも正直な自分なのでそれはそれでアリかなと。

今回のアルバムで「スロウな帰り道」という曲があるんですけど、この曲の評判が凄く良いんですよ。確かにあの曲が一番等身大の自分で作った曲なので、その作り込んでいない部分が反映されていたので良かったなと思っています。本当に素の自分だったので「このままで受け入れてもらえるんだ」と思いましたし、これを良いと言ってもらえたことは凄く嬉しいです。ありのままの自分を受け入れてもらえている感じがして安心感があり、心強さもあり、変に格好つけなくて良いんだ、ありがたいなと思いましたね。

今後の予定は何かありますか?

歌菜子:本当はアルバムに入れたかったけど時間が足りなくて諦めた曲がいくつかあるんですよ(笑)CDにしなくても配信でのリリースだったり何かしらの形で皆さんに届けたいなと思っています。
かなポン第二弾もやる予定ですし、曲作りは続けていきます!やっぱり自分にはそれしかないので!

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先日フィナーレを迎えた「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」のエアロビ曲として有名な作詞作曲歌菜子による『恋はmoon night mystery』が収録されている「VSコンプリートソングコレクション」も発売中!
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投稿者: 管理者

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